「今週のことば」 2014年6月

<6月 第4週>
上井草校 室長  田草川 英毅


この時期、自分が楽しみにしていることが一つある。それはプルンバーゴという植物が道すがらの家々の庭先で涼しげな薄青紫色の花を咲かすことである。つい先日、スーパーに買い物を頼まれて買いに行ったとき、スーパーの向かいの花屋の店先にプルンバーゴの鉢が売ってあった。ためらうことなく3鉢購入して帰った。庭に置いておいたが、最近、花いじりに目覚めた妻が自分のために買ってきてくれたものだと自分勝手にいいふうに誤解して、嬉々としてさっそく庭に植え替えてくれていた。いずれ庭一面が青一色に彩られたら、かつてない幸福感に浸れるんじゃないかと夢見ている。
プルンバーゴは花を咲かしている期間が長く、年末くらいまでしぶといくらいに色を次第に褪せさせながらも粘っているが、その後、半年はまるで沈黙を守るかのように、まったく青色を視界に入れさせてはくれない。それが、突然のように儚げで目を奪う美しい色の花をパッパッパッとつけはじめる。それが今の時期なのである。
突然の開花ラッシュは心を躍らせる、今年も見せてくれてありがとうと感謝したい気持ちにさせられるのだが、半年の準備期間があるが故の今だと思うと、この自然の営みは私たちに示唆すべきものを含んでいるように思わせてくれる。仕事柄、子どもたちの勉強を見ているときにも同じような感触を得られることが多々あるのだ。入塾したばかりの生徒の中にはこちらの指導法と自分なりの勉強の仕方がしっくりいかずに、すぐに結果に結びつかずに、多少焦る気持ちも芽生えながら、ある一定期間足踏み状態に陥る子がいる。それでも生徒が努力するのをやめずにいくと、徐々に生徒と講師の間の信頼の関係の深まりぐあいに合わせながら、生徒本人の躓いている原因が見えてきて、講師もアドバイスを重ねていくうちにこちらの期待通りの答えが返ってくるようになる。そして、それがこちらの願うラインよりもはるかに高い結果を出すことも多いのだ。今まで生徒を覆っていたシールドが開いて、どんどん理解して吸収していく、そういう時こそ講師冥利に尽きる瞬間であり、生徒にも感謝したい気持ちにさせられるのだ。
突如のスパークはその前のある期間に人知れずの努力があってあらわれてくる。まわりにはそれはみえていないことだけれども、それを避けては通れないものなのだと気づかせてくれた。プルンバーゴの花を見かけると、美しさに目をやるだけでなく、そのことにも思いがいつも行くのである。



<6月 第3週>
石神井本校 講師  吉田 満典


 三年前の夏、中2の女の子が入塾してきた。彼女は数学が苦手だった。

 ある日、授業は終わったものの、演習問題がなかなか解けず彼女は居残りして勉強していた。何度も何度も消してやり直すが正解にたどりつかない。入塾してからずっと、そういう状態が続いていた。そのたびに「大丈夫か?わからなかったら質問して」といい続けた。しかし、彼女はかたくなな表情をしながら「大丈夫です」と答えてから口を一文字にして、また消し始めた。なんて素直じゃないんだろう。そこまでプライドが高いのはどうしてなんだろう。今後、どう付き合ってあげればよいのか悩んでいた。でも、ただただ待つしかないと思い、終わりがないと思える声かけだけを続けていた。

 わからないことをわかるまで教えてあげるのが塾だ。でも彼女の場合は違った。「教えてください」の一言を待ち続けた。私のプライドがそうさせたわけでもない。私のいつものスタイルでもない。ただなぜか彼女だけには待ってあげたいと強く思えた。たったのひと言だか、彼女にとっては何かが大きく変わる気がした。

 その日もそのひと言が出ないだろうなと思いつつ、私は教室を出ようとした時である。
解けない問題をじっと見つめながら、「教えてください」と、かすかな声が漏れた。ビックリしながらも平常心を装いながら、ひとつひとつ丁寧にゆっくり説明を始めた。だが、彼女は10秒もたたないうちに大粒の涙をぽたぽたとノートに落とした。彼女は説明している箇所を目で追うこともなく、ただ一点を見つめて泣いていた。心配になって涙の理由を聞いてみたが、ますます泣くばかりである。一度も叱ったことも責めたこともないのにどうして・・・。少し落ち着くまで私も何も言わず、ただそばにじっと立っていた。

 数分たっただろうか、涙を拭き、ため息を一回ついてこう言った。「解けなくて悔しい!」。今思えば、この数学の一問が解けないから泣いたのではない。学校のこと、習い事のこと、家庭のこと、そして塾のこと…すべてが思うようにいかず、前に進めない状態だったに違いない。壊れかけていた心とは逆に、大丈夫ですというしかなかったのである。私は彼女にこう言った。「これからは大丈夫。何度でもわかるまで付き合ってあげるから」

 それからは、よく質問をしてくれるようになった。そして、教えてくださいと言うとき彼女はいつも笑顔だった。あたかも教える前から半分わかったような安心感があるみたいに・・・。



<6月 第2週>
上鷺宮校 室長  瀬戸 義弘


勇気を出して質問してくれた女の子

中間テストにむけて土・日はテスト対策を行っています。そのとき普段とてもおとなしい中3の女の子がテスト勉強をしに来ました。先週は部活で来られなかったのですが、この日は部活が午前だったので来ることができました。

そのとき理科の勉強をしていました。その子に「わからないところない?」と声をかけたところ、問題集のある問題を指さして、小さな声で「ここがわからないです」とためらいながら質問してくれました。見るとその問題集に付箋を何ヶ所も付けてありました。丸付けしたときに解説を読んでもわからなかったところにしるしを付けていたようです。

このとき、わからない問題にしるしをしていたことに感心するとともに、中学時代に理科の先生が“聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥”と言っていたことばを思い出しました。高校受験前の授業で自習のとき、生徒は列をつくって質問する順番を待っているぐらい質問をしましたし、先生は丁寧に教えてくれました。その先生がよく言っていたことばです。

解答を読んで理解できるという子はいいですが、そうできない子もいます。「質問があります」と言えない子もいます。その子も少なからず勇気を出して、質問してくれたのだと思います。でも声をかけていなかったら…。一人ひとりをよくみて接してあげないといけないと思ったのと同時に、わからないところを少しでもわかってもらえたことに、教える喜びを感じました。

先生はわかってもらえるのが嬉しいのです。みなさんの「ここを教えてください」ということばを待っています。



<6月 第1週>
大泉学園校 室長  渡辺 悠希


私は初対面の人に自己紹介をするときに、
「塾で教えている担当教科は、数学です」と伝えている。

そうすると、多くの方から、次の言葉が返ってくる。
「数学ですか。学生の頃は苦手でしたね」

私が教えている生徒たちは、将来、「数学」という言葉を聞いたときに、
どのような思いを持つのだろうか?

先日、中学3年生の数学の授業で、男子生徒が、次の言葉を口にした。

「数学、いやだなぁ」

この言葉は、この生徒の率直な思いなのだろう。
この男子生徒は、小学生の頃からエースセミナーに通ってくれているので、
小学生の頃と比べて、数学の成績は上がっている。

本人も、成績が上がっていることは自覚している。
それでも、数学に対する苦手意識は、今でも強く持っている。

私は、この男子生徒に伝えた。

「○○君は、数学に負けるの?」

生徒は、少し考えてから、元気よく答えてくれた。

「負けません。僕は数学に勝ちます」

将来、この生徒が、「数学」という言葉を聞いたときに、
どのような思いを持つのだろうか?

「僕は、苦手なものにも、逃げずに立ち向かった」

このような思いを持ってほしい。

その思いが、その後の人生を支える力になるから。



「今週のことば」 2014年5月
 
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