「今週のことば」2017年10月

<2017年10月第3週>
保谷校 室長 野澤 幸夫

「人の為に役立ちたい強い想い」

 
 先日、「塗魂ペインターズ」というペンキ屋のボランティア集団のニュースの特集を見た。ヨーロッパ・バルト三国に位置するリトアニア共和国のカウナス市にある旧日本領事館、杉原千畝記念館の修繕塗装をするものだった。
 杉原千畝記念館とは、第二次世界大戦時下、日本のシンドラーと呼ばれる外交官の杉原千畝が、政府の方針に反してユダヤ人を助けるために「命のビザ」を発給したことで知られる旧日本領事館だ。1930年に建てられ、築80年以上が経過した建物は、老朽化が進んでいるが、資金不足で放置されていた。そのことを去年1月に新聞記事で知った「塗魂ペインターズ」を立ち上げた池田さんが、海外での経験はメンバーの自信になると考え、今回の実施となった。そのためそれぞれ30万円をかけてやってきたという。
 この団体は、資金が無い学校や被災地に出向き、無償で修復を行ってきた。結成されたのは8年前、これまで90か所以上を修復してきた。そのメンバーは、元暴力団や元暴走族で一度は社会からドロップアウトした人々だが、社会から認めてもらおうと進んでボランティアに参加したという。池田さんも在日韓国人として生まれ、差別への反発から暴力事件を起こし高校を中退し、仕方なくペンキ屋に就職したという。周囲には自分と同じように挫折を味わった若者が多く、活躍し自信を持てる場を作りたいという思いで、このボランティア団体を結成した。
 リトアニアでは、老朽化が進む歴史的記念館を当時の雰囲気をそのまま残せるように、文化財の修復に使う材料が定められ、今回の修繕塗装もドイツでは「マイスター」と呼ばれる職人のみが使用する天然素材「シリカット」という塗料を使うよう求められた。日本ではほとんど使われることのない塗料のため、ムラになってしまい、メンバーに焦りが見え始める。歴史的建造物ということもあり、現場は緊張感が漂い、施工方法を何度も打ち合わせ、確認しながら慎重に作業を進める中、この問題もハケを重ねるアイディアで、より広い範囲を塗れるようになったほか、1列で一斉に塗ることで境目も無くすことに成功し、最終日には見事に完成した。杉原記念館の館長も駆けつけ、「とても満足している。ボランティアの姿勢が杉原千畝と重なった。」と評した。メンバーも、「技術で人を喜ばせる力を持っていたんだ。」と達成感を実感していた。池田さんは、「塗装屋にしかできないボランティアに、無料で塗ってあげたら喜ぶだけのことだ。」と話していた。また、来年3月にはタイのバンコクでスラム街の孤児院を修復するという。
 この特集を見ながら杉原千畝の偉業を改めて想い起こし、人として生きていくとはどういうことか、価値ある人生とはどういうことか、等々多くのことを改めて学んだ。また、困難があっても皆の知恵を出し合って解決してゆく姿、何よりも嬉々として修復作業に取り組む人々がまぶしく、非常に美しかった。
 さらに、人間には善意の無限の可能性が秘められていることを実感した。辛くやるせない日々を送っても心の底には人のために役立ちたいという強い想いがあり、立派に成長していたことをはっきりと見ることができた。そして、何事も成長するには、時間がかかるということも知った。まさに向上心、向学心を胸に秘めた人間、いろいろなことがあっても長い目で見ていくことは極めて大切だ。



<2017年10月第2週>
エース・ワン石神井公園校 室長代理 田中 浩介

「大学入試改革に思うこと」

                                 
 今、学習塾業界は2020年の大学入試改革に臨み、また、それを受けて小中高の教育内容の変化が本格的に始まろうとしている中、教材会社やいろいろな機関が主催するセミナーが多く持たれ、たくさんの学習塾、予備校が参加し、どこも遅れてはならないと必死になっている現状である。
 1979年に始まった大学共通一次試験の制度は1990年に大学入試センター試験と改められ今まで続いてきたが、再来年2019年で終止符を打ち、2020年から大学入学共通テストという名前(仮称)に変わり、内容も大きく変わる。40年ぶりの大改革である。
 ちょうどその半ば20年前に大改革された教育はいわゆるゆとり教育で、結果、これは大失敗であった。世界の中の日本の教育水準がさがり、子どもを引き上げるのではなく引き下げた結果になった。しかし、このゆとり教育も、それまでの知識詰め込み教育の弊害、いわゆる受験戦争の弊害を改善しようと考え抜いた策だったはずである。しかし、それがマイナスと出たのだ。
 学習塾は、そのときの生徒の成績を上げ志望校に合格させる機関ではあるが、教育に携わるものとして、理想の教育を考えざるを得ない。今、私たちが指導し影響を与えている子どもたちが、20年後には社会を担うようになっている。2037年。そのときに正しく社会に責任を持ち、正しく理想の社会を築ける人材になっているか、理想の日本、世界を築く一員になっているか、それは政治家だけの話ではなく、社会を構成する一般人全ての話だ。
 そして、それは、20年後の世の中を担う今の子どもたちを正しく育てているのか、正しい教育を提供しているのか、と今の教育に携わる我々にはねかえって来る問題である。だから、こういう大改革のとき、目の前のことに右往左往するのではなく、本当に長いスパンで物事を見つめ、将来の日本、世界に必要なものを正しく判断し、そしてそれを提供し伝えていける教育者を目指したい。そういう意味で、今回の教育の大改革は期待している。
 その過渡期にあたる子どもたちは得てして負担を強いられることであろう。その子どもたちに寄り添って、正しく越えていけるように全身全霊尽くしていきたいものである。



<2017年10月第1週>
 石神井本校 講師 高倉 令茂
 
「つらくても、英語教科書の本文暗記の王道を

 勉強に暗記はつきものだ。掛け算の「九九」、社会の年号の語呂合わせ、法則・定理の暗記や名作冒頭文の暗唱など、何事も学び始めに、まず暗記がある。
 そもそも「学ぶ」の語源は「真似ぶ(まねぶ)=まねる」から来ているとも言われる。手本となるものをそっくり、そのまま受け入れることが新たに学ぶものにとって最もオーソドックスであり、手っ取り早い方法だ。
 英語を学び始めたばかりの中学生にとっても、基本的な英文の暗記は必須である。石神井本校では、特に定期テスト対策時の授業で、教科書の試験範囲の英文をそっくり暗記することを目標としている。その理由は、

     ① 英語に触れる機会が少ない環境の中で、英語との距離感を縮めるため
     ② 英語のさまざまな表現:単語・イディオム・語法(どのような形で使われるか)を
      深く理解するため
     ③ 日本語と異なる、英語独特の感性を磨くため
     ④ 速読を心がけることで、長文のリーディング力・リスニング力を高めるため
である。
 したがって、たとえ教科書本文が中学校の定期テストにそのまま出題されないとしても、教科書本文の暗記はとても有効な英語習得法になる、と信じている。
 しかしながら、「言うは易し、行うは難し」である。実際、中学生が試験範囲をまるまる覚えるのは決して楽ではない。実に時間がかかり、手間隙がかかり、できなくてイライラする。覚え切るには、剛直なまでの素直さが必要だ。されど、自分にはない異物を自分に取り込む、この段階が一番重要なのだ。適当にワークを解くのは楽だが、覚え切れていないのに頁が捗るわけがなく、結局答えを写すことになり、もとの木阿弥になる。ウンウン・・・唸るばかりで、遅々として進まぬ生徒には、実際にやって見せたり、音読を繰り返してリズムで覚えさせたり、文法的に解説したり、ヒントを出したり・・・。手を替え、品を替え、あの手この手を使って何とか覚えてもらうしかない。
 どんなものでも、自由に扱えるようになるのはたやすいことではない。自分の掌に載せられるようになるのは、決して簡単ではない。自らに負荷をかけ続けねばならない。しかし、そこにこそ成長がある。
 いろいろな事情や制約がある中で、計画的にテストの準備を万端整えられるのはとても賢くて、心の強い生徒だ。やりたくてもできないのが子供だとすれば、それを手助けし、生徒の責任でやり切ったことにするのが、私たちの仕事だ。
 良い結果が得られ、その要因をさぐる時、「苦しかったけれど、アレのおかげだ。」と思い当たれば、生徒は苦しくても、つらくても、自らやるようになる。そのような体験を持つことが生徒にとっては、成長・飛躍の原点ではないだろうか。安易な道を選択し、結果として成長の芽を摘むことのないよう、生徒といっしょに苦労しながら、共に成長できる道を選びたい。



「今週のことば」2017年9月
 
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