「今週のことば」 2017年6月

<2017年6月第3週>
石神井本校 講師 吉田 満典

「こどもの心の世界」     
      
 
私が教育関係の仕事につきたいと思ったきっかけの一人に、吉岡たすく先生がいる。同世代の方ならご存知の人も多いはず。「テレビ寺子屋」のメガネをかけた四角いお顔の先生と言えば、思い出して頂けるのではないか。
 
この先生自身もとても興味深い先生だが、それ以上に吉岡先生の語られる「こどもの心の世界」にとても引き込まれてしまった。
 
時代が変わって、こどもたちの環境も大きく変わり、こども自身も変わってきたという報道をよく耳にする。でも私はそうは思わない。言葉使いや生活スタイルなどが変わってきているのは事実だが、子どもの本質、いうなれば「こどもの心の世界」は今も昔もそして未来も変わらないものだと思っている。
 
吉岡先生の書かれた本にこんな話があった。
 
ある日曜日の出来事。父、母、こども三人で昼食をすませ、お母さんが一人で後片付けをしていた。そのとき、台所で、ガチャーンと音がした。こども三人が急いで台所に行ってみると、お母さんの足元に大皿が真っ二つに割れて転がっていた。
「誰がわったんや、ねえ、ねえ」
と少しニヤニヤしながらお母さんに声をかける。
「三人ともやかましいわね。あっちへ行ってなさい」
と言うが、こどもたちは絶対に行こうとしない。なぜなら、今日は自分たちが失敗したわけではないからである。
「どうしたんや。一番上等のお皿とちがうの」
とさらに騒ぎ立てるが、お母さんは黙って返事をしない。しかし、しばらくして割れてころがっている皿を拾い、割れたところを両方からくっつけようとすると、それを待っていたかのように高校生の長男が
「あ、それは無理や、くっつかないよ」
「わかっています」
その返事も待っていたかのように中学生の次男が
「わかってるんやったら、せんほうがええよ」
と、突っ込む。我慢できなくなったお母さんは
「お皿ひとつぐらいで、いつまでやかましく言ってるの。このお皿はね、もう古いお皿でひびもはいっていたし、そんなに大事なものとちがうの」
と言い訳をした。すると、小学生の三男がポツリと
「やっぱり、おとなは得やなあ」
 
 
 
もし、こどもが失敗したら、親はすぐにあやまりなさいと叱る。子どもたちはしぶしぶ口ではあやまるが、心の中では不満だらけだ。この場面でも、親が失敗したらどんな態度をとるのかと思って見に来ているはず。
「いつもあなたたちが失敗したとき叱ってたのに、今日は母ちゃんがぼんやりしてわってしもた。みんなをびっくりさせてわるかったわね。ごめんよ」
と頭を下げてみたらどうなるだろうか。たぶん、それ以上、こどもたちは何も言わないはず。それどころか、逆に心配されて
「お母ちゃん、これからもあるこっちゃ、気をつけや」
「そやなあ、母ちゃんも気をつけなあかんなあ」
と笑いながらの会話となる。 
 
こどものやる気を喚起するために親が叱咤激励をする。よい成績をとらせるために親は、こどもにとってはかなり難しい約束をする。こどもが親の必死な気持ちをわかってくれないと個別懇談で涙ぐむお母さんたち・・・。
 
こどもたちにとってはなかなか親の気持ちまではわからない。なぜなら、まだ親になったことがないからである。でも親はこども時代を経験して親になった。ここが大きく違う。
 
親が素直になれば、こどもも素直になれる。あたり前のことだが、大人にとっては意外と難しい。毎日、生徒と保護者と向き合う塾の講師にとっても、素直になることは、とても大切なことである。
 
私はそういう講師であり続けたい。



<2017年6月第2週>
高崎校 室長 小川 真一郎

「理解とは、どういうことか。説明するとなると難しい。」

  
理解とはどういうことか、説明できる人はあまりいません。
私も、わかりやすく、一言で説明することはできません。
せいぜい、理解するということは、意味がわかることだという程度でしょうか。
しかし、試験問題を解くには意味がわかっているだけではだめです。
理解している内容を再現できなければいけないのです。したがって、理解とは「自分なりに納得して思い出せる」ことではないでしょうか。丸暗記は理解ではありません。納得して再現することと、知識の丸暗記はちがいます。
問題を解くときは、暗記と理解を使い分けるのが普通です。数学の問題を解くときに、公式の導き方をいくら知っていても、暗記している公式がそのまま使えるなら、そのほうがずっと速く問題を解けます。暗記した知識で機械的に解けない問題が出されて初めて、自分の理解している内容を思い出して問題を解けばよいのです。
 
理解しなければならないのに、やっぱりわからないということはよくあるものです。そのような場合はどうすればよいのでしょうか。理解するのは、暗記することより難しいのがふつうです。なかなか理解できなくて、勉強を投げ出したくなることも多いでしょう。
実は、ある部分の理解は、他の部分の理解が前提になっている場合がよくあります。「前に○○ということがあったな。それで今回……ということになっているのか。」と考えて納得することが多いのではないでしょうか。
では、前提になる他の部分の理解がなければどうしたらよいのでしょうか。
これがなかなか大変です。難しいものを簡単にする方法はありません。でも、なぜ難しく感じるのかは明らかです。初めて目にする単語や専門用語の意味がわからないからです。用語の意味がわからなければ、その用語を使って書かれた文章を読んでも理解できるわけがありません。
したがって、新しい用語が登場したら、意味を確認してなるべく早く覚えることです。あたりまえですが、早く覚えれば使いこなせるようになるのも早い。新しい用語が出てきても、いちいち悩まないで「そういうものなのだ。」と軽く考える人は、新しい分野で戸惑わずにいち早く理解できます。一般的に「頭がよい」と言われるのは、そういうこともあるかもしれません。
 
わからないと言って困っている生徒に対して、内容そのものをわかりやすく説明してあげるだけでなく、生徒自身が自分で新しい内容にどんどんチャレンジできるよう、これからも応援してゆきます。
 



<2017年6月第1週>
 早宮校 室長  中岡 秀彰

「縁の下の力持ち」           
 
 今年度から小学校のPTA活動をやっている。毎年4月の保護者懇談で学級委員とPTA委員の選考をするのだが、立候補者がいないのでクジ引きが恒例となっている。保護者たちが固唾を飲む独特の雰囲気の中、見事当たりクジ(?)を引き当ててしまった次第だ。
 小学校の内側のこともよくわかるし、職業柄、ここは
「これも何かの縁だ」
と考えることにした。しかし実際は想像以上に大変だった。
 子どもたちにリサイクルの大切さをわかってもらおうということでペットボトルやアルミ缶を回収する資源回収部に所属したが、全校生徒への資源回収呼びかけのメールやレジュメの作成、月に一度、校門の前で登校してくる生徒からペットボトルを回収するなど、複数のお母さんたちと手分けをしておこなっている。
 小中学生のお母さんたちの忙しさは、塾での保護者懇談を通じ、よく理解していると思っていた。しかし午前中は比較的、時間に余裕のある塾関係者とちがい、お母さんたちは幼稚園や保育園にかよう小さい弟妹たちの送迎からパート、夕食の準備と八面六臂。ひねもす分刻みのスケジュールなのだ。PTA会議室では、チョコマカする子どもたちを傍らで遊ばせながらリソグラフをフル稼働させているたくましいお母さんもいる。
 学校行事の見えないところで獅子奮迅の働きをしているお母さんたちはまさに「縁の下の力持ち」。
 今回、素晴らしい「ご縁」をいただいたと思っている。



「今週のことば」2017年5月
 
お問い合わせ